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眉を寄せて指先を動かしていたシミアンは、やがて諦めたように腕を脇に垂らすと、椅子の背に身体を預けて天井を仰ぎ見た。
ふっと視線が横に流れて、シミアンが身体をねじる。
硝子の向こう、透明な青い空気の中で黒髪の少年が1人、ベランダに立っていた。顎を少し引いてこちらを見ていた少年が、硝子に手を伸ばす。
「待って、開かない」
慌てて立ち上がり、シミアンはベランダの硝子戸の鍵を開けた。
「また、来たね」
戸に手をかけたままで、少年に笑いかける。少年はそれに応える代わりに、尋ねるように首を傾げた。
「上がってよ」
顎で示して、シミアンは身体を脇に寄せて、少年が中に入るのを待った。こちらを横目で見ながら、少年がゆっくりと部屋に踏み入ると、シミアンは戸を閉めて鍵をかける。
「座ったら?」
部屋の真ん中に立っていた少年はそう言われて、椅子には座らず床に胡坐をかいた。何をするでもなく、薄い青色の目が、シミアンの動きを追っている。
冷蔵庫に向かいながら、シミアンは少年を盗み見た。
自分よりもほんの少し大人びている少年が突然に訪れたのは、一週間ほど前のことだ。いつものようにメッセージの確認をして、チャットで友人たちとの会話を楽しんでいた時、ふと気づいたらベランダに彼が立って、こちらを見ていた。
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