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キシンは瓶を受け取ると、礼を言うように視線を向けた。それから瓶を傾けて、形ばかりソーダに口を付ける。喉がわずかに傾くのに合わせて、真っ黒な髪が額から顔の横に滑り落ちた。
それを目にしながらシミアンは、自分も瓶を傾けて、微かに苦いソーダを飲む。
一口飲み下したところに、タブレット端末から電子音が呼びかけた。
「何?」
眉をしかめて、シミアンは画面を覗き込む。眺める先で、モニタが文字を表示し始めた。仲間からの談話のお誘いだ。
次々に打ち出される文字は、複数からのメッセージだろう。好き勝手なことを並べては、巧みにシミアンの興味をそそってくる。
「キシン」
シミアンは決めがたい顔をして振り返った。
そういえば、最近はキシンにばかりかまけていて、仲間とのチャットに加わっていない。友達甲斐のない奴、という冗談半分の言葉が、いつか本当に刃となって降りかかるかもしれない。
「ちょっとだけ、いいかな」
キシンは肩を竦めて、関心なさそうな顔をする。まるでシミアンにも興味がない素振りで、キシンは窓の外を見た。
ほんの少し物足りない顔をして、シミアンは机に向かった。それからスコープを直すと、机の面に投影した実体のないキーボードを叩き始める。
キシンは青い目を細めて、部屋の隅のベッドに視線を移した。
柔らかな白い羽根枕の上に、アクリルの箱が置いてある。
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