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「で、暁はどこに行くつもりだったんだ?」
「買い物。材料がなくなったからね。雅龍さんは…まだ仕事?」
「あぁ、でも書類を出したら今日は終わりだ」
「じゃぁ、帰ってくるの!」
「あぁ」
「よし!今日は雅龍さんの好きな物作るね」
久しぶりの一緒の食事にわくわくしてどれを作ろうかと考えていると、雅龍さんがふっと笑った。
「一緒に買い物に行くぞ」
「えっ、でも仕事は?」
「すぐ終わる。車の中で待ってろ」
「うん!」
シートベルトをすると車がゆっくり動き出す。
俺は久しぶりに会う雅龍さんを隣でチラチラ見ながら、あまりの嬉しさににやにや顔を抑えられなかった。それに気付いた雅龍さんは苦笑いを浮かべている。
「暁」
「うっ、ごめん。久しぶりだから今の内に雅龍さんをチャージしとこうと思って…っ…!」
俺は息を呑み込む。雅龍さんが俺の手をぎゅっと握ったからだ。雅龍さんの視線は真っ直ぐ前を向いたままだが、にやっと笑っていた。
「俺も暁不足だからチャージさせてくれ」
「う、うん。俺も!」
ぎゅっと握り返すと雅龍さんも握り返してくれた。それが嬉しくて目的地までずっと手を握り合っていた。
雅龍さんの仕事場、警視庁の駐車場に着くと繋いでいた手が離れる。
もっと繋いでいたかったなっという目で雅龍さんを見つめていたら、くしゃりと頭を撫でられた。
「10分ぐらいで帰ってくるから大人しく待ってろよ」
俺が頷くと雅龍さんはにっと口の端を上げ、職場へと向かっていった。
長身でスーツの上からでもわかるぐらいガタイのいい雅龍さんの背中。
はぁ、背中もめちゃカッコイイなんて反則だよな。
俺はその背中を見つめながら、過去、雅龍さんとの出会いを思い出していた。
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