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お互い無言で数秒後、たかさんが口を開いた。
「……アオイは、どうしてこんなところで働いているんだ?」
「えっ、そんなこと聞いちゃうの?たかさん変わってるねー。別に大した理由じゃないよ」
あははっと話をそらそうとしたが無言の圧に耐えきれずいったん口を閉じる。
「……」
「も、もうー、たかさん!その無言の睨みやめてよ!めちゃ痛いよ!」
無謀にバシバシと肩を叩いてみた。
「……」
無言である。泣きたくなった。
「あぁーもう!わかりました!言えばいいんだよね!よくある話だよ。あー、あれだよ、バカ親の借金のせい……。金が、いるんだ……稼がないと……いけなくて……」
震える唇をぐっと噛み締めていると、逞しい腕に引っ張られすっぽりと抱きしめられた。
「えっ?」
訳がわからず大人しくしていると、ポンポンと背中を優しく叩かれた。柑橘系の優しい香が鼻をくすぐる。
なんだかほっとする……。
しばらくそうしていると胸板に当てていた耳に優しい低音ボイスが響く。
「もう、大丈夫だ」
「……だい……じょう……ぶ?」
「お前はここで働かなくてもいい、ということだ」
「えっ……どうゆう……こと?」
「この店が違法店だからだ。俺は小鳥遊雅龍、警察官」
胸ポケットから警察手帳を出して見せてくれた。
「……ほっ、本当に?」
「あぁ、今から騒がしくなるからここに隠れとけ」
たかさん……雅龍さんはグシャグシャと俺の頭を撫でると個室から出て行った。
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