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「…兄貴は仕事で忙しいから、いらないって言われた」
お昼どころか朝ご飯や晩ご飯も。
「そっか。じゃぁ帰りも遅いんだろ?寂しいな」
譲のその言葉に胸がギュッと痛む。
遅いどころか最近帰ってこない。
寂しい…か…確かに。
「…寂しい」
「兄ちゃんと二人だからいないと寂しいよな」
うんうんと腕を組んで頷く譲の斜め上から「何が寂しいんだ?」っと低い声が聞こえ飛び上がる。もちろん譲が。
「びっくりした…。青葉先生、急に後から話しかけるの禁止!」
ぷくっとほっぺを膨らませる譲に青葉先生が「ゴメンゴメン」っと頭を撫でる。
そんな2人を無視し、さっさとパンを食べ終えた俺は時計をチラリと見て席を立つ。
「譲、悪いが先に行く」
「えっ!なんで!」
「図書室に本を返しに」
「それでは」っと青葉先生に挨拶し、部屋を後にした。
ぴしゃりとドアを閉めると、イヤホンを付け図書室の方へと歩いていく。
スマホをいじり、霧雨の曲を再生。
それを聴きながらふっと口の端を上げた。
「歌詞の意味がわかんねぇか…そうだよな…」
俺は1年前、霧雨のラジオ番組を聴いていた…。
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