約束

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 4缶目にもなると頭が痛くなり、酔いというよりも気持ち悪さが先にきた。これ以上は危険だと身体が告げている。 「生きてる限りは有効なんでしょ」  吐き出した言葉は虚しく全て自分に返ってきた。  新しく越してきたこの部屋にはどこにも彼の匂いはない。体温も感じない。あるのは仕事道具とうず高く積まれた空き缶だけ。  もちろんひと缶ひと缶律儀に洗ってラベルを表に向けている。そういう性分なのだ。だってその方が美しいじゃないか。  私は生きている。だけど約束は果たされなかった。最初に破ったのはどっちだったのだろうか。いや、そんなことはどうだっていい。  昔から遊女は指切りをしておきながら模造の指を相手に送っていたというではないか。結局こんなことは気休めの騙し合いでしかないのだ。  私はバタンと、一人だと大分広く感じるシングルベッドにダイブした。  明日になったって気分が変わることがないことは自分がよく知っている。けれど今はもう眠ろう。もしかしたら明日になれば新しい模造の指を送る相手が見つかるかもしれない。  ロウソクの火はまだ灯っている。私は強く生きていく。  完
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