0人が本棚に入れています
本棚に追加
指切り拳万、嘘ついたら針千本呑ます、指切った。
--約束よ。私はあなたの物。あなただけを愛しているわ。
「なんて薄っぺらな愛」
私は吐き捨てるように呟き、溜息をついた。
肘をつくテーブルの上には、空になった発泡酒の缶が三本並んでいる。わざわざ銘柄を自分に向けて置いてあるあたりが私らしい。私らしくて笑けてくる。こんな時まで神経質にならなくていいのにと、半分怒りにも似た感情が込み上げて、そしてその感情は次いで瞼の裏を熱くした。
駄目、泣いてはいけない。
だって悪いのは彼だけじゃない。私も同罪だ。
わかっているのに、瞼の裏に灯り始めた熱は収まるどころか勢いを増すばかりだ。このままでは睫毛が焦げついてしまう。
鎮火しなければと湧き上がってくる水を無理に押さえ込めば、ぐずっと鼻が鳴った。
最初のコメントを投稿しよう!