約束

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 浮気をした。  それは出来心だった。いつまでも陽の目を見ない私を持て囃してくれる言葉の数々に、これまで微動だにしなかった足は完全に浮き足立っていた。  その人は私に甘い。なんの才能もない私にさも才能があるかのように甘過ぎる言葉を囁いてくる。  いつのまにかちょっと強い風が吹けば、首を傾げるくらいの柔軟さを私は手に入れていた。それは次第に首から腰に変わり、次に膝が折れ曲り、ついには足を地面から離してしまった。  彼への愛が薄らいでいたとかそういうことではない。愛はあった。ただ当たり前すぎて、その大切さに気づけていなかったのだ。  あぁなんて嘘くさい。吐き気がする。  違うのだ。私は二つの愛を手に入れたいと欲に溺れていた。だから失ってしまった。わかりやすいくらいに単純な構図。
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