花火

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爆音と光は止むことなくこの夜を支配し続ける。誰かのあげる掛け声もかき消して、夜空を数秒自分だけのものにする。 時折混じる火花の中から別に生まれた火花がしゅるしゅると動くのをみると少し可笑しな気持ちになる。 弾けた花火が消える間もなく次々と花火が打ち上げられ空に広がっていく。柳のように焔を垂らす花火も打ちあがり始める。光が瞬いているのを眺めるのは気持ちがよかった。 一瞬だけ、人生という文字が心に浮かぶが花火が消えるよりも早くその文字は消えた。 輪のように広がる花火や、土星のような花火が上がる時間は終わり、花火の打ち上がる間隔がだんだんと詰まっていく。三つも四つも花火が重なって花束のようにすら見え始めた。 いくつも上がる花火の音で胸の中から何かがせりあがって来そうになる。 だがその何かを吐き出すよりも早く、光は闇を染め上げて、音は胸を打っていく。最初の頃は打ち上れば溜息の出るような大きな花火が惜しげもなく空に何度も広がり消えていく。さらに速度を上げ空の半分を常に花火が占めるほどになる。 爆音が連鎖するように響き、火花は散らばりすぎて花ではないように見えるほど広がった頃、唐突に花火は終わりを迎えた。 急に止んでしまった花火に肩透かしを食らったようだったが余韻が心を占めていて、不満に思うことはなかった。 満足感を抱きながら立ち上がり、何もなくなってしまった夜空を見上げた。ただ呼吸をしたつもりが溜息になった。 次の瞬間、今までとは比べ物にならないくらいの轟音と閃光が夜空を占める。目は眩みそうになり、耳は抑えたくなるほどの強烈さだった。数えきれない数の花火が同時に咲き乱れ、空には光しかないほどだった。最後に今までで一番大きな柳が三つ続けて打ち上げられ、花火は終わった。 一度終わったと思っていた私は騙されたような気持になる。だがそれ以上にあの花火たちに圧倒されとてもものを考えられる心ではなかった。 知らぬ間に笑顔になっていた。私は必死に顔がほころぶのを抑え、家路に急ぐ人ごみの中に紛れて行った。
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