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わたし「ねぇ、寒くないの? 毎年毎年こんな雪深い山に、趣味の写真撮影に来てさ。飽きない?」
彼女「飽きない。好きだから、来るのよ」
わたし「ふぅ~ん……、変わったコねぇ。でもせめて手袋でもしてきたら? 頭にも帽子とか……」
彼女「写真を撮るのに邪魔になる」
わたし「あっそ……」
わたしが何を言っても聞く耳を持たない彼女は、熱心にシャッターを押し続ける。
彼女は写真を撮るのが好きで、良い写真を撮るのがもっと好きで、こんな田舎の雪山に一人で訪れるほどの無謀さ……いやいや、勇気がある女の子だ。
わたしと彼女が出会ったのはほんの二年前、彼女がコンクールに出す写真を撮りにこの山に入ったものの、思いっきり迷った。
わたしは幼い頃からこの山を遊び場として育った為に慣れていて、迷うことなどない。
だけどこの山は冬になると茶色の木が真っ白に染まるほどの雪が降り、色が白一色となる。
そのせいで周囲の景色が全部同じに見えてしまうせいで、遭難者が絶たない。
決して高い山でもなければ、山が連なっているわけでもないのに……。
だから麓の人々は、この山には人ならざるモノが住んでいるのではないか――と噂をしていた。
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