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どこまで無限大で、どこまでも限定的な世界。
意味がないからいくらでも意味をつけれる、だから無限大。
でも意味をつけてもそれ自体がもうすでに無意味、だから限定的。
あと少し、あと少し、あと少しで、私は超えてはいけない世界を超える。
「新しい」世界に、「新しい」私は産み落とされる。素材は音だったり光だったり原子だったり。姿形は違わないけど、全てが「新しい」自分。
私の指先と「私」の指先の間隔、距離にして0.00000000000000000001ミリメートル。人間の視覚では誤差として認定されるこの距離はしかし、「私」にしてみれば世界全体を空虚さで埋め尽くすには十分過ぎた。
「僕は右腕をあげる、とただちに左手が答える........」
ピタリ、と私は右手の動きを止める。
静かに目を閉じ、再び窓を見つめる。だがそこに「私」はいなかった。そしてそこに映っていたのは、だらしない顔をした私だった。
右腕を戻す。すると鏡に映る私も左右非対称ながら同じ行為を行う。
「はい丹野君ありがとう、じゃあ今日の授業はここまで、起立、礼、さようなら」
終業のチャイムと同時に現代国語の教師は去っていく。ガヤガヤと教室は話し声で溢れかえり、各々帰り支度を始める。
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