二つの世界、二つの私、一つの空

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「ねえねえ、今日さクレープ食べて帰ろうよ」 話しかけられて、実感する。ああ、ここが私の居場所なのだと。 「うん、私チョコバナナクレープ食べたい」 「いいね、っていうかあんた授業中ボーッとしすぎでしょ、その腕時計をくれた愛しのあいつのことで妄想でもしてたの?」 「もう、そんなんじゃないって」 ケラケラ笑う彼女を横目に、私もまた帰る準備をする。 最後にもう一度、窓を見つめる。 雲ひとつない晴れやかな冬の空が、どこまでどこまで、広がっていく。 そして二度と、私は「私」を見かけることはなかった。
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