後書き

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ではなぜ言語とは、こうも不安定なものなのだろうか。思うにそれは、言語そのものに問題があるのではなく、世界の本質を無視して現象を枠組みの中に無理やり押し込めようとするから不安的になるのであろう。世界の本質、すなわち世界のあり方。それは流動的で不安定であり、そして「絶対無」の空間。僕らそんな世界の中で「安定」を目指そうとしている。安定した生活、安定した家庭、安定した安心。だから経済が悪化するという「予想外」の自体に苦しめられる。愛する人の突然の死に嘆き悲しむ。新しい思想を拒絶する。安定を築き上げようとしている土台が「不安定」なのだから、当然といえば当然なのだが、ならば何故人はその本質から目を背けるのだろうか。答えは割と簡単に自分の胸の中にあるのかもしれない。 「怖いから」 感情的理由を目の前に突きつけられては、納得してしまう他ない。そこにはしっかりとした理論などないのだが、恐怖は人の行動を支配する理由としては最も本能的であり、最も合理的である。我々は信じすぎてしまっているのだ。弱肉強食のサバンナの世界とは違い、人間社会は「安心・安全」のモットーを売りにしているスーパーの牛肉と同じだと。その精肉工場の裏で何が起こっていようと、我々は知らないが。     
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