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すこし恐ろしくなって、とっさに視線を元に戻す。目のレンズに投影されていた影は、風に吹かれて消えていく。今度は乾燥した風が、目をシバシバさせる。
「...どしたの?一人でブツブツ怖いよ」
気づけば数メートル先で立ち止まっている友達に声を掛けられる。ほんの数秒まで一緒に歩いていたつもりだったのは、私だけだった。
「ううん、空が綺麗だなーって思ってさ」
そう言って目をこすりながら、私は彼女の方に駆け寄っていく。
まぎれもない、真実。
「ところでご飯どうする?」
「クレープでも食べにいく?」
意識はもうすでに、昼食をどこで食べるかという些細な議論へと移っていく。
移行時間、その実0.01秒。忘却は、思い出すことより簡単に、人の中にプログラミングされてるみたいだ。
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