二つの世界、二つの私、一つの空

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別に寝ていてもバレないのだが、どうも睡眠障害でも患っているように、目を閉じるとまぶたがプルプルと震えだして、眠ることを体が拒絶しているように感じるのだ。ちなみに昨日は夜遅くまで友達と長電話をしていたせいで、短時間の睡眠しかとっていないので、これが尚更辛い。眠いのに寝れない。最後の授業が終われば晴れてこの「学校」とは名ばかりの監獄から解放されるのだが、まるで時が経たない。 「だからして彼はこの鏡の表現を用いることで、読むことは書くことと同一であると語っているわけですね」 窓ガラスの反射に映った自分の姿をぼーっと眺める。何ともだらしがない顔をした女性がこちらを見つめていた。 手を伸ばせば、私は向こう側の世界に行けるに違いない。向こうの女性と同化して、私は初めて完璧な「私」になれるのよ。さあ、今こそ手を伸ばす時なのです。あなたに神々の加護があらんことを!そしてその美しき栄誉が、世界を時間を再び早めんことを! こうも脳が眠いと、現実と虚構の区別がつかなくなってくる。くだらない妄想が現実世界を超越し、さもかし私の左手に巻きついた、あいつからもらった腕時計が本当に時間を飛ばす宝具のように感じたらもう手遅れだ。 机の上に開らかれた教科書に覆いかぶさって、平行な伸びをする。身体中の筋肉のコリが程よくほぐれて、少し心地いい。 それにしても今日はとてもいい天気だ。冬の空が、こんなに綺麗だったなんて知らなかった。 雲ひとつない、でもどこか夏の空よりも薄く透き通った、青い空。何度も見てきたその空をしかし、まじまじと見たことはなかった。     
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