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私の存在している世界は、私のものだ、決して「私」に取られていいものではない。例えどんなに彼女の世界が魅力的でも、決してそこへはたどり着けないし、行こうとしてはならない。鏡に映る私の姿は、もう私から独立していた。窓ガラスによって断絶した空間を挟んで、私は「私」と対峙する。
それは筋肉と神経とか、頭と体とか、男と女とか、そういう二つの対立じゃない。
矛盾しているのだ。二つと存在しないはずのものが存在し、そして対峙する。
同じものが二つ面と向かって並んでいるのに、対立が生じる。矛盾が生じる。戦いが生じる。
私の中の知らなかった私とか、無意識の私は、みんな私の味方。でも同じく「私」の味方であり、そして私の敵でもある。
絶対にその二つの存在が一つになることはない、なってしまえば全てが崩れ去って、私も「私」もこの世界から消えてしまう。意味を失って、名前を失って、そこらへんの石ころや風や草のように、ただ「存在」するだけの物質になってしまう。
信じるものがあるから、好きなものがあるから、生きる意味があるから、私は生きている。両親は大好きだし、学校は友達がたくさんいるから楽しいし、好きなことに打ち込める部活は充実しているし、ケーキは美味しいし、何より心底あいつに惚れている。だから私は死にたいと思ったことなんてないし、人生に満足だってしている。
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