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ぐしゃりと変な音がしました。
何度も何度も叩きつけました。
気持ち悪い赤い血が私の体に飛び散り、まるで赤い服を着ているみたいになりました。
地面に倒れた男は体をエビのように痙攣させると動かなくなりました。
頭から滲み出る赤い血が、横たわる彼を汚しそうになったので、急いで足で蹴って敷地の隅にある溝に落としました。
私の愛する彼は数日間生きていました。
私はずっと彼に寄り添い続けました。
やがて彼は静かに息を引き取りました。
死んでしまっても彼は美しいままでした。
それに比べ溝に落とした男は悪臭を放ちウジが湧いて、見るのもおぞましいほどでした。
その時です。
ここにはないと思っていた絶対的存在が首をもたげました。
識子。
私は初めて絶対的存在の声を聞きました。
これで私の話は終わりです。
私を狂った女だとお思いですか?
大丈夫です。
私は狂ってなんかいません。
分かっています。
私は人を殺しました。
殺人です。
でもあの男は私の彼を殺したのです。
ええ、分かっていますとも、彼は人間ではありません。
男は木を1本切り倒しただけに過ぎません。
それも男の敷地内にある木。
事実上彼は男のもので男は爪の先ほどの罪も犯してはいません。
それでも私にとっては、彼はかけがえのない愛しい存在だったのです。
私にとっては人と同じいやそれ以上の存在だったのです。
なぜ、私を放っておいてくれなかったのですか?
私は人目のつかない山の麓に引きこもり、なるべく他の人と接触しないようひっそりと暮らしていたのです。
子どもの頃から植物の言葉が理解できた私はもともと人とそぐわない異質な存在としてこの世に生まれてきたのです。
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