43人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
ずっと息苦しくて、やっと呼吸できる場所を見つけたのに。
そこで愛する彼と幸せだったのに。
なぜ、みんな私を放っておいてくれなかったのですか?
みんな私を植物のように無視してくれていれば、私は殺人を犯すこともなかったのに。
それとも、やはり私は狂っているのでしょうか?
ねえ、裁判長さん。
法廷内は静まりかえった。
そこにいる皆が美しい被告人を見つめた。
「あなたの言うその絶対的存在とはなんですか?」
裁判長は女に訊ねた。
女は何度か瞬きをした。
長い睫毛に濡れたような瞳。
花びらのような唇が動く。
「よく分かりません」
女は証言台を撫でた。
その木目をゆっくりとなぞるように。
それはまるで死んだ木の声を聞いているようだった。
最初のコメントを投稿しよう!