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転職エージェント「ナリワイヤ」の事務所は、不思議なほど落ち着いた空気が漂っていた。大都会にあるビルの前の道は、人々がぶつかりそうな勢いで歩き、ごちゃごちゃと何を売っているのかよく分からない店が立ち並んでいるというのに。 水島は考えていた。 壁一枚向こう側の外とは異空間のようで、いまだに来るたびに違和感がある。しかしなんだ、この心地よさは? 本業の人材派遣会社「オーエン」のビルは、中にいても外に出ても感覚は変わらなかった。成績が良くても周りとそれなりにうまくやっていても、常に何かに追われていた。大きな黒い影が一定の距離を置いて見張っているようだった。 それに比べここは同じ業種の仕事をやっているとは思えない。まあ、木を基調とした書斎のような部屋にクラシックが流れる事務所と比較するものでもないだろうが。
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