0人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
僕は少女の姿が夢の女の子と重なるのを感じた。
ーーわたしが大きくなったら一緒にお祭りに行こうね。約束だよ。
そうだ、お祭り……
記憶のカケラが一枚の絵のように合わさっていく。そうだ。あの日もこんな雨で、ずっと楽しみにしていた神社のお祭りが中止になった。僕は駄々をこねて親を困らせた上に、この公園に逃亡したんだ。子どもの考えることなんて今思えば単純で本当に幼い。
不貞腐れて遊具の中に隠れて、気づくと今みたいに隣に女の子がいた。でもその時の僕は彼女の存在を不思議には思わなかった。それどころか勢いで家を飛び出したものの、一人でいる心細さに怖気づいていたところだったから、彼女の存在はありがたかった。
僕は日が暮れるまで彼女と遊ぶことに没頭した。
これは後から聞いた話だが、公園にいたはずの僕の姿は、警察の世話にまでなって探していたにもかかわらず、誰にも見つけることができなかったらしい。当時は神隠しに遭ったなんて近所で騒がれていたみたいだが、あながち間違いではなかったのかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!