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「君は……」
僕が呟くと女の子は一瞬で大人の女性へと姿を変えた。まっすぐな黒髪も胸まで伸びて、街灯の光を受けると品良く輝いた。目線が高くなった分、少しだけ首が楽になる。おそらくこれが今の彼女の本来の姿なのだろう。
「神様をお守りするのがわたしの役目」
彼女は何か大切な呪文でも唱えるかのように澄んだ声で恭しくそう言った。
僕は少し考えてからお社と彼女を見比べた。
「そうか、君はこのお社だったのか」
通常なら信じられないような話だが、僕は疑うことをしなかった。これは事実であると、言葉では説明できないが彼女の纏っている空気がそう告げていた。
「なんで僕の前に?」
「……お別れを言いたくて」
最後に添えられた笑顔には、自分の運命を憂えているわけではないが、どことなく淋しさが滲んでいるように感じた。
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