第三章 糾弾

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「そういうことか。やっぱり今朝の二宮摩季に似せた女も、二宮代議士が送り込んだ偽装工作員だな。ありがとう佐野さん。この情報を佐藤さんに話して後を任せれば、私もあの嫌な役目から解放される。助かるよ」  ふと、テーブルに影が落ち、一同が顔を上げると、ドリンクの載ったトレイを手にした長身の男が立っていて、ダークブラウンのくせ毛がかかった彫の深い顔に笑顔を浮かべている。  ぴったりとしたパンツに、シャツのボタンを2つ外してカフェ・ラテ色の肌を覗かせている姿には男の色気があり、この店にはこんな目を引くウェイターがいるのかと、星歌はどぎまぎしながら見つめてしまった。  そんな星歌にウィンクを一つ投げ、あろうことかその男は山峰の隣の席に座り、その頬に軽く口付ける。 「久しぶりトオル。元気だった?」 「ああ、リアム元気だよ。君は相変わらずセクシーだね」 「最高の誉め言葉をありがとう。トオルに効かないのが残念だけど・・・」  二人の会話に目を白黒させる星歌に向かって、リアムと呼ばれた外国人がからかうようにフフッと笑った。  やれやれと肩をすくめた山峰が、リアムを星歌と杉本に紹介した。 「彼がジャズミュージシャンのリアム・ジョンソンです。本来はジャズピアニストなんですが、日本ではサックスプレイヤーとして活躍しています。日本語はこの通りペラペラですから、何でも聞いてやってください」 「今もピアノは、かなり弾かれるんですか?」     
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