第三章 糾弾

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 一方、会場に1時間前についた星歌と裕也は、開場を待つ人の列の長さに驚いていた。  例の書き込みに、川崎が出演するイベントで何かが起こるらしいと、演劇の仲間たちが知らせたせいか、チケットが飛ぶように売れたのだ。  おかげで団員たちに配られる割り当てのチケットさえも、無くなってしまったほどだ。  席は自由席なので、売り切れの知らせに、席順を取るために早くから並んだ客や、余ったチケットがないか聞き歩く者でごった返し、当日雇われたガードマンたちが大声を張り上げて、列の整理に当たっていた。  サークルメンバーの劇は前座で行われるため、昨日リハを済ませて、今日は劇団員の邪魔にならないよう、発声練習やメイクまで別の個所で行った。  その為、初めてみる大勢の客を目の前にして、星歌は自分が上手く演じられるかどうか不安になった。  足取りが重くなった星歌の手を、裕也が握り締め、大丈夫だと勇気づける。 「いつも家でやってるように、気持ちよく歌えばいい。客席は畑で、観客はかぼちゃやキャベツだと思ってれば、緊張なんてしないよ」 「あれが、かぼちゃ?ずいぶん色とりどりのかぼちゃね。裕也の呑気さが羨ましいわ」     
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