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「いや、俺だってドキドキしてるんだよ。自分の技量は自分が一番知っているから、力の足りない分は努力してから向かえばいい。でも、立ち向かうのが星歌の場合、助けたくても、ただ見てるしかできない。自分が何かするよりも不安でドキドキしているよ」
愛情深い裕也の言葉に、星歌は心が温まり、不安が融けて流れていくように感じた。
「ありがとう裕也。そうだね。お客さんたちに聞いてもらえるレベルになるまで、一生懸命練習したんだもん。観客席は暗くて顔なんて見えないだろうから、畑でのびのびと鼻歌を歌う気分で頑張るわ」
裕也の手が星歌の頬と髪の間にもぐりこんで、指先が優しく地肌を揉みこむと、その手の平に頬を擦りつけながら、星歌が裕也の顔を見上げる。
二人の目にはお互いの信頼が映り、口元には決意の微笑みが浮かんだ。
星歌と裕也は、喧噪を後目にそっと裏口から建物に入ると、少しの間抱擁を交わして、裕也は客席に、星歌は女性専用の控室に向かうために分かれた。
控室に入った途端、劇団員、サークルメンバーの視線が一同に星歌に集まった。
「覚悟はいい?」と団員が聞く。
星歌が「はい」と頷くと、全員が一斉にやるぞ~と声を上げ、控室は熱気に包まれた。
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