エピローグ 切り落とされた幕

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 観客は偽美弥子がつかまえた女性に一斉に注目した。  スポットライトが星歌に当たり、観客はその女性が前座で歌った佐野星歌であることを知って、息を飲んだ。  嫌がる星歌が引っ張られ、大声でやめて、巻き込まないでと叫ぶが、そこへ、2階から駆け付けた偽者たちが加わって、星歌を囲んで中央通路を歩き出した。  3階からも遅れた偽者たちが次々加わり、通路は同じ恰好をした偽美弥子と、偽摩季に占領された。  その人垣に、星歌は胴上げのように担ぎ上げられ、悲鳴をあげながら、ウェーブに乗せられて舞台へと送られていった。  無理やり舞台に上げられた星歌は、合計12人の偽美弥子と偽摩季に囲まれ、生贄はこの人が良いわ。この人にしましょうという合唱と共に、茫然と立ち尽くす川崎の前に突き出された。  偽美弥子の一人が川崎に(そそのか)す。 「誰も本当のことだと思いはしないわ。だってお芝居だもの。観客は目くらましにあって、私と摩季さんは無罪放免」 「そうね、あの時も偽物を用意してもらったから、今回も紛れてしまえば、誰が本物か分からなくなるわ。あとはよろしくお願いね。佐野星歌さん」  そう言い残して、偽美弥子と偽摩季が、あっという間に舞台袖や出口に消えて行く。     
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