第一章 助教授の企み

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 もう若さも無く、自分自身に女としての自信を持てなくなった時、ちょうど川崎のいるスクールへ通うことになった。  夫以外の男性に腹式呼吸の練習の為とはいえ、腹部に触れられたのには正直焦ったけれど、甘い顔で、「上手ですよ。その調子」と耳元で褒められれば、変に疼きそうになる気持ちを逸らして、一生懸命に発声練習に励んだ。  いつの間にか先生に認めてもらうために、発表会のチケットを多めに買ったり、川崎の出したCDを何枚も余分に買ったりするようになった。  異性としてではなく、ただ身近なアイドルみたいな気でいたのに、触れ方が怪しくなったのを気のせいだと見て見ぬふりをした途端、抱き込まれた。  最初は抵抗したものの、男の力に敵うはずもなく、強引にキスに持ち込まれ、身体の力が抜けた。  もう、あとはなし崩しだった。  最後まではいかなかったが、川崎は衣服を乱しもしないのに、一方的に乱れた自分への恥ずかしさから川崎への対処ができず、その甘さに付け込まれ、言いなりになっていった。  摩季が大学仲間とコンサートをするといえば、当然伴奏は自分がすると川崎が主張して、高額なバンド料を請求してくる。  跳ねのけようとすれば、甘くねだってご機嫌を取り、かと思うと気に入らないと冷たくされて、摩季は川崎の手管に翻弄された。     
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