第一章 助教授の企み

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 夫を裏切った罪悪感は最初こそ感じていたが、夫が外で隠れて遊んでいることに感づいた摩季は、お互い様だと開き直るようになった。  根がお嬢様なので開き直ると言っても、蓮っ葉になることもできず、川崎から与えられる愛撫を愛情だと思い込むことで癒され、お互いの裏切りから目を背けた。  もう若さもない自分を女として愛しんでくれるのは、川崎だけだと思っていたのに、あんなことを複数の女性にしていたなんて…。  馬鹿だった。自分は何て愚かなんだろう。  涙が後から後から零れ落ち、床で跳ねた。  どれくらい自己憐憫に浸っていただろう、突然インターホンが鳴り、摩季は慌てて鏡で身だしなみを整えた。  部屋の子機が鳴り、通いの手伝いの女性から、Y・K・Mスタジオに通う浜地という女性が訪ねてきたことを告げられた。  タイミングよく現れた音楽教室の浜地と名乗る女性に、摩季は不安を覚えたが、もしかしたら川崎のことと関係があるのかもしれないと思うと、居留守を使うこともできず階下に降りる。  玄関を開けるまでに、浜地が誰だか思い出そうとしたができず、手に嫌な汗をかきながらドアを開けた。    
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