第二章 濡れ衣

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第二章 濡れ衣

 賃貸マンションの前に泊まった幼稚園バスから降りてきた先生が、大きな声で母親と園児たちに挨拶をすると、園児たちはかわいい仕草でぺこりと頭を下げながら、おはよ~ございます~と元気よく返事の挨拶をした。  佐野星歌は4歳になる息子の祐樹の手を先生の手へバトンタッチすると、すぐママ友の小川美香と加藤早紀へと場所を譲った。  小川の娘の里緒菜と、加藤の息子の亮太が、祐樹に続いてバスのタラップを上がっていく。  行ってきま~すと窓から手を振る子供たちへ手を振ると、バスが発車した。  小川と加藤は専業主婦なので、いつも他愛もないおしゃべりをしながら、ゆっくりとエントランスまで歩くが、パートがある星歌はすぐに出かけなければいけないので、エントランス前で二人と別れて駐車場に向かう。    車を10分ほど走らせると、街中とは打って変わって、森の中を走っているような景色になった。そこに「庭園カフェ憩いの森」があり、星歌はそこでウェイトレスをしている。  普通の喫茶店と違うのは、コーヒー1杯の値段が3、4倍もするのと、中庭に向けて設置された部屋は各々上手く仕切られていて、それぞれのテーマごとにインテリアが工夫されているところだ。     
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