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「……私達には絶望しか無かった、彼女達は虜囚の辱しめを受けて身体と心を汚し尽くされ、私は敗残兵としてあてどない逃亡を余儀無くされた、先行き等欠片も見えず私は逃亡を続けながら心のどこかで絶望し、覚悟していた、今まで培ってきた騎士団長としての矜持がへし折られ、心まで壊し尽くされてしまう事を……」
ミリアリアはアイリスの言葉に応じつつ躊躇いがちにアイリスの手を握り、その行動にアイリスが一瞬身体を硬直させているとミリアリアは笹穂耳を赤らめさせながら言葉を続ける。
「貴女はそんな私を救ってくれた、そして汚し尽くされていた彼女達も貴女によって救い出された、魔王だとかそんな事は関係ない、私達にとって貴女は命の恩人なんだ、私だって本当は大恩ある貴女を敬称付きで呼びたい、たが何と無く、本当に何と無くなんだが、私がそう呼んでも貴女は喜んでくれない様な気がするんだ、だが、私も彼女達と同じ様に貴女に感謝しているんだ、本当にありがとう」
ミリアリアはそう言うと感謝の念を示す様にアイリスの手を優しく握り、アイリスは耳を仄かに赤らめさせながらその手を握り返す。
「……そうね、確かに貴女に敬称付きで呼ばれてもあんまり嬉しくは無いわね、これからも今まで通り接してくれたら嬉しいわ」
「……分かったそれでは私が些か心苦しいが貴女がそう望むなら、喜んで」
アイリスの告げた言葉を受けたミリアリアは微笑みながら言葉を返し、頭をあげたライナ達はその光景に思わず頬を緩めた。
それから一同は前進を続ける下級幕僚とワンウッド傭兵隊に視線を移し、彼等は自分達の行動が筒抜けになっている事に気付かぬままダンジョンの奥へと進撃を続けていた。
異形のダンジョンに侵入した新たな獲物ワンウッド傭兵隊と下級幕僚、彼等はこのダンジョンの異常さに気付かぬまま意気揚々と進撃を続けていた。ダンジョン奥へと進撃していく一歩、それが地獄に進んで行く一歩と同義な事に気付かぬまま……
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