第5話■絆創膏

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第5話■絆創膏

 ある日僕は包丁でケガをした。  指からの大量出血……驚いた彼女は絆創膏を巻いてくれた。  なぜだか昔母親がそうしてくれたのを思い出し、くすぐったくなった。  他にも母親に似ていると思う瞬間が何度かあった。  仕事中に何が起こっても冷静に対処する程肝がすわっているはずなのに、プライベートではそそっかしい上にちょっとしたことで慌てだすところとか。  ニコニコ笑って人に流されそうに見えて、おかしいと思うことは意外にはっきり言うところとか。  母親に若い頃の写真を見せられたことがあるが、目元や雰囲気もなんとなく似ている気がした。  親父は無神経にも「お前はうちの奥さんの若い頃に似ている」と彼女に言ってしまい、彼女は「なんですかそれ」と少し困ったように笑った。  変な錯覚を起こすのは、一昔前の格好にも原因があると思った。  自分に無頓着な彼女がなんだか放っておけなくて「洋服がダサいから一緒にショッピング行って選んでやるよ」と言ってみたら断られた。  みんなで行きつけのラーメン屋に連れて行ってみたら「今まで食べたラーメンの中で一番美味しい」と言うので僕のチャーシューを半分あげた。  激安チェーン店に連れて行ったら「18禁コーナーに迷いこんだ」と泣きそうな顔をされるわ偶然友達に会うわで焦った。  忘年会のカラオケに行った時は、彼女のドリンクをこぼしてしまい「喉が乾いた」と怒るので僕のをあげた。  カラオケは個人的にも行き、彼女が好きな曲を一緒にデュエットした。  僕も彼女も上手い方ではなかったが、なぜか息がぴったりで、彼女が歌うと「全部アニメソングに聞こえる」とみんながツッコんでいた。  僕達は仕事帰りに職員数人で色々な所に行った。  ある日彼女には彼氏がいることが分かった。  勝手にいないと思っていた分なんだかモヤモヤした。
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