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その横顔があまりにも美しかったので、藤吾郎は思わず口を開いた。
「…買ってやろうか」
緋色はぱっと顔をこちらに向けて驚いた顔をした。
「いいのか?」
「かまやしねえよ…丁度金ならあるしな」
藤吾郎は先程悪いことを言った償い代わりだと自分に言い聞かせたが、本当のところ緋色の喜ぶ顔が見たくて仕方がなかった。
飴屋の男におやじ一つ、と言って藤吾郎は鳥の形をした飴を受け取ると緋色に手渡した。
緋色は大層喜んで、頬を紅潮させて藤吾郎に笑いかけた。
「ありがとよ旦那」
ずく、と胸が甘く疼く。
藤吾郎は目を細めて自分より少し低い緋色の頭を撫でた。
緋色は嬉しそうに飴細工を回して色んな方向から眺めている。
「…食わねえのか」
「え?これ食えんのか?」
「ああ…そりゃ舐めるもんだ」
緋色はぽかんと口を開けた。
子供のように表情がころころ変わる男だ。見ていて飽きない。
藤吾郎がそう思っていると緋色は赤い舌を伸ばしてぺろりと飴を舐めあげた。
そうして甘い、と驚いた声を出す。
「すげえな。こんなに綺麗で甘いもんがあるのか」
無邪気にはしゃぐ姿とは裏腹に、飴を舌でなぞる仕草がやけに官能的で藤吾郎は思わず目を逸らした。
緋色はそんな藤吾郎に目を向け、持った飴を口元へ差し出した。
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