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祭はいつも大賑わいだ。男の笑い声、女の歌う声、飴売りの飴を片手にはしゃぐ子供の声。
色々な雑踏が祭囃子に乗り騒がしい一つの音楽になっている。
藤吾郎はまずはどこに寄ろうかと辺りを見渡した。とはいえ右を見ても左を見ても夜店が連なりすぐに選ぶことは難しい。
歩きながら決めた方がいいなとある程度進んだ時、ふと足を止めた。
騒がしい大通りから奥まった道の暗がりに、ひとつの夜店がある。
はて、こんな人気のない所で店を出してどうするのだろうか。
しかし騒がしいものより静かなものを好むたちの藤吾郎は自然にその店に寄って行った。
夜店に足が一歩近づく度に、後ろから聞こえる祭囃子が遠く遠く消えていくような不思議な感覚に陥った。
少し近づくとその夜店が何を売っているのかがわかった。
木桶の中で悠々と泳ぎ回る赤や白、少しの黒。
どうやら金魚すくいらしい。
何故だか木桶の上には赤い格子が付けられている。
金魚など逃げるものじゃないだろうにおかしなことをする、と思いながら何気なしに見ていると店主の女が話しかけてきた。
「そこな旦那、やっていくかい」
煙管を咥えた女は藤吾郎を見て、いらっしゃいと手招いた。
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