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ぱしゃん、と闇の中で何かの水音がする。
「十五年。この命でまた新しい金魚を産み落とさにゃあ」
煙管の煙を揺らしながら呟くのは店主の女。
「"自分だけを愛してくれる男"の願い、確かに叶えた。まあちょいとあの金魚は独占欲っつうのが強いかもしれねえけどなあ」
赤い格子をつけた木桶の上に白い足を投げ出して笑う。
その木桶の中で舞い踊るように泳ぐ赤、白、黒。美しい魚たち。
「金魚がもたらすものは幸か不幸か、まあ、それも客次第」
女は夜店の提灯の火を灯し、乱れ髪に鈍色の簪を差し込んだ。
この店は金魚楼。
「さて、次はどんな客が来るだろうか」
さあさあ。よってらっしゃい、見てらっしゃい。
金魚楼の金魚は願いを叶える摩訶不思議な魚。
お代はお安い。あなたの命をひとしずく。
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