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これは何だと女店主に問いかければ女は煙管の煙をふうっとふいて白い頬に亀裂のような笑みを浮かべた。
「寿命さね」
「寿命…だ?」
「お代は旦那の命だよ」
ぞく、と藤吾郎の背筋に嫌な冷たさが走った。
そこまで距離が離れているわけではないのに耳に届く祭囃子がやけに遠い。まるでここは表から切り離された別の場所のようにすら思えた。
「…悪い冗談なら」
「冗談なぞ言わないよ。水揚げが三年、身請けしてえなら十五年だ」
「水揚げ?」
遊郭じゃあるまいに、と女を見れば女は店先の赤提灯を顎で差した。
「うちは金魚楼、まあ口で言うより…旦那のような堅そうなお人には見てもらったほうが早いってもんだ」
女はそう言って格子をどけると木桶の中に白い手を差し入れた。
ゆらゆらと水の中で歪んで見えるその手に、一匹の金魚が餌でも貰えると思っているのか吸い寄せられるように近づく。白い鱗に赤が散っている。
女はその金魚を荒く掬い上げた。ぱしゃんと地面に打ち上げられた金魚は跳ねまわって鱗を落とした。
こんなことをしたら死んでしまうのではないかと金魚を見つめていた藤吾郎だが、やがて異変に気が付く。
金魚が跳ねる、また跳ねる、またひと跳ねする度に姿が変わっていく。
どんどんと人の姿に近づいていく。
「いたた…」
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