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1年対2年の試合のスコアをつけながら、ふと、目をやる。
結城 瑛斗くん。
背が高くて、もう、文句なしの超イケメン。
鼻筋が通ってて、黙って立っているだけで凛々しい。
どちらかというといつもは飄々としていて、掴みどころがなさそうで、そんなに感情もあらわにしない。なのにバスケの試合になるとガラッと変わる。生き生きしてて、獲物を狙う動物みたいな、野性的な、カッコよさ。ファンを名乗る女子たちが居るのも、納得できてしまう。
もう一人。目を引くのは。
「瑛斗、後ろ!」
よく通る声が響いて、瑛斗くんがパスを送ったのは、工藤 彰くん。
バスケ男子の平均よりは明らかに小さめ。瑛斗くんとはだいぶキャラが違う。カッコいいけど、可愛い。サラサラの髪の毛。人懐こい笑顔。いつも人の中心で、おっきな声で話して、笑ってる。アイドルみたい。瑛斗くんとは違って、女の子ともきさくに話すし、男女問わず人気がある。先輩からも可愛がられてると思う。
瑛斗くんからもらったボールを、綺麗なフォームで、3ポイントシュート。綺麗に、すとん、とゴールに入った。背が高くなくても、バスケが出来るって、一人で証明してるみたいなプレイをする。
「よっしゃ……っと……う、わっ」
入った瞬間、叫びかけた彰くんは、背後にいた先輩とぶつかって、二人まとめて転がってしまった。
「…ってー。 …あきら、重い」
「すいませ…っ」
彰くんにすっかり乗られて、文句を言ってる先輩と、変な風に倒れてうまく立ち上がれない彰くん。
すると。ぐい、とわきの下に手を入れて、瑛斗くんが彰くんを引き起こした。
「いつまで乗ってんだよ」
引き起こして近くにいる彰くんに、瑛斗くんがぼそ、とつぶやく。
「……ありがと」
なんだかちょっと不機嫌そうな瑛斗くんに、彰くんがそう答えて、見上げると。瑛斗くんは、ん、と頷いて、くしゃ、と彰くんの髪を撫でた。
あ。まただ。
毎日毎日近くで見てると、あ、と思う瞬間がある。
多分。
瑛斗くんは、彰くんのことが。
多分。すごく、好き。
でもって、彰くんも、多分きっと。
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