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「勇者、そなた、余と戦うつもりか……!」
「聞け、魔王! この俺も思い出したのさ……。かつてこのような布を使っていた魔王の名は、教祖魔王! 十二匹の金の魔軍王を従え、聖勇者たちと戦ったのだったな!」
「その通りである! 今の勇者が知っていたとは……! だが……?」
「最近の魔王を描いた絵図にも、薄布のある物を見た覚えがある。一周まわって薄布も新しいのかもしれないが、そこまで嫌がっているものをそのままにしておくわけにもいかない」
「勇者ゆえ……、というわけか」
魔王の言葉に、勇者はうなずいた。
「たとえ魔王が相手といえど、心の重荷を取り除くのが勇者……!」
言いながら、勇者は軽く首を傾げていた。疑問に思う点も多々あるのだろう。
「後で余に挑んでまいれ! この魔王のローブや、両肩と額にある魔力のこもったオーブがそなたを阻む!」
「……その大仰なローブや肩の飾りとオーブも、今の時代にそぐわないと思っているということか……」
勇者が呆れたように言った。
「余を愚弄するか!? 挑んでくるよう命じただけだ!」
「魔王が気にするように、たしかに今のマントなどは短くなっているな」
勇者は道具袋から『はじまりの服』という冒険初心者向けの旅装を出して装備した。
シンプルな青色の上着の腰に、四角いポーチつきの茶色のベルト。薄茶色のパンツの裾をこげ茶色のブーツに入れ込むスタイルだ。
勇者は『はじまりの服』付属のマントをふわりと羽織った。腰のベルトより少し上までの丈しかない、土色のマントだ。
「それだ、それ!」
魔王が勇者を指さした。
「この余ですらも、ローブやマントの長さにも流行というものがあることを知っておるというのに、魔王軍幹部はこれが伝統的な魔王の装束であるとしか言わぬ!」
「魔王よ、その気持ち、この俺にもよくわかる」
勇者が一歩、魔王に近寄る。
「そのような短いマントを持つそなたに、余のなにがわかると言うのか!」
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