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 父が何でも許すから、罪悪感もそこそこに次の罪を犯すのではないかとも思う。  だからと言って、父までもが自分を許さなかったら、自分は常に罪悪感に押し潰されながら生きていかねばならないのだろう。  それだけは避けたくて、父の好意に甘えながら、父に多大な心労をかける罪悪感だけを耐えている。  妃を抱いていた時が一番楽だった。  愛する人のことばかりを考え、不穏に支配されそうになっても妃にすがれば全てが解決していた。  父親に見せても罪悪感を覚えない作り上げた自分は、恐らく社会に馴染んでいた。  妃を愛し続ければ、一生この世界で平穏に過ごせるものだと思っていた。  しかし、自分にはそれを成し遂げる素質がなかった。  そして作り上げた自分は、父が好きだという自分とはきっと違うものだ。  自分に何ができて、何が最善なのかわからない。  思うままに振る舞いながら、負荷はその代償であると、自分の(ごう)だと(あきら)めることが、今現在、最も楽な生き方。  自宅に足を向ける父を追う。  愛する人に、そうでない人間にも、本来の自分を明確に認識されているこの現状は、賢一にとってそれほど悪くはない世界だった。 了
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