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 賢一は、作り上げた自分を喜んで破壊した。  今まで苦しんだことが本当に無駄だったと、自由に振る舞わなかったことを後悔した。  好きな時に他人を殴り、暴言を吐き、犯す。  批判されても、それが自分なのだと満ち足りた気分になった。  ただ、父親にだけは負担をかけたくはないのに、歯止めがきかなくなり狼狽した。  街中で喧嘩をして警察に保護され、身元引受人として父が現れる時にだけ、罪悪感が湧いた。  父の運転する車、対角線上の後部座席で、賢一は父の背中を見る。  若年寄で、昔から全く変わらない父。 「よそ様に迷惑をかけるなって、何回言ったらわかるかな」  穏やかな口調で言われると、賢一は何も答えられない。  賢一が悪者だと思われるのは自分も悲しいと、父は賢一が子供の時から言っていた。  父を悲しませたくないが、もう二度としないなどと、絶対に無理なことは言えない。 「俺って死んだほうが良くね?」  誰にも迷惑をかけない生き方などできない。  自分がいないほうが全てが丸く収まると、軽く考える。  しかし父はまた、穏やかに言った。 「俺、賢一のこと好きだから、死んだら困るかなぁ」     
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