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「―― ごめんねぇ、
ちゃんと家で飼ってあげられればいいんだけど
今の住んでるとこ、ペット禁止だから」
ここはシェアハウスへ帰る途中にある
小さな児童公園。
ミケの仔猫が妙に懐いてしまって。
嵐亭からもらっておいた残飯を与えている。
「じゃあ、また明日」
そう言って和巴は仔猫に手を振り、
ベンチから立ち上がった。
その時 ――
「―― かずは?」
聞き慣れた優しい声に、ビクンッと立ち止まる。
「かず……」
(う、そ……)
和巴は振り返らずにとっさに駈けだした。
「待ってかずっ! 逃げないでくれ!」
(どうして? どうして匡煌さんがここに……?)
「かずっ ……くそっ」
匡煌は無我夢中で和巴の後を追う。
(お願い ―― 私の事はもう放っておいて)
カンカンカンと鳴り降りる遮断機。
「和巴っ」
「来ないでっ!!」
降りてきた遮断機の下をくぐり、向こうの道に
出る和巴。
「和巴っ!」
匡煌がやっと遮断機に着いた時、
電車はすぐそこまで来ていた。
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