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列席者達からの暖かい拍手が会場を包むよう
広がってゆく。
利沙は演説台から一歩下がって列席者達へ一礼し
大林へも一礼して
ステージから下り、自分の席へ戻った
卒業式だけは各学部と共催なので
数百人単位の学生及びその父兄達が大挙して
集まった。
父兄として出席した兄達がとても興奮しながら
「あんなに天使の輪が並んでいるのを始めて見た!」
と言ったくらい黒髪をツヤツヤさせた女子が
たくさんいた。
本当に自慢の母校だ。
場を乱すような人もいないので、
卒業式は滞る事なく厳かに進行し。
感極まって涙する人の姿も見られた。
和巴も利沙も胸がいっぱいになり込み上げてくる
ものをグッと堪えた。
そうしていよいよ、卒業生の退場だ。
涙の残る顔、湿っぽい顔をみんなで見合わせ
「ニヤッ」と笑う。
ここからがある意味、本番だからだ。
司会役の1年生の号令で一礼し、
席順に中央通路へ移動していく。
在校生達は一様にざわつき、ソワソワしだす。
卒業生が在校生の横を通るちょうどその時、
在校生の頭上に向かってたくさんの
飴やチョコやお菓子を放り投げ始めた。
ワーッと皆で手を伸ばしそれらをつかんだ。
その次の集団も、またその次の集団も、
お菓子の雨を降らせてくれる。
一体、その晴れ着の何処にこんなにたくさんの
お菓子を隠しもっていたのだろう?と
不思議に思うほどだった。
時にはコンビニのおにぎりも降ってきて
取り合いになった。
誰もがニコニコと笑っている。
とても晴やかだった。
卒業は終わりではなく始まり。
その言葉がピッタリと当てはまる、
そんな門出の日だった。
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