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「―― かーずぅぅ、こんな所におったんかぁ、
わい、めっちゃ探したんやどー」
そう言って、ネコ並みの人懐っこさで
背後からヒシっと和巴へ抱きついてきたのは
鮫島祐太朗。
卒業単位の懸かった試験の前日、
隣町の不良グループと傷害事件を起こし
無期停学処分を受けて留年。
だから今日は在校生としての参加だ。
因みに煌龍会の二次団体・鮫島組の次男坊
である。
「どわっ。あんたねぇ、ええ加減そうやって人に
ベタベタまとわりつくんは止めてぇな。うざいっ」
「グサッ!! ……今のひと言マジ傷ついた……」
そこへ
『ゴルァ!! ゆうっ。てめぇまた和巴に
しょうもないちょっかい出してたのか?! 』
と、先ほどの女子達をようやく撒いてきた
あつしがやって来た。
「いい加減にしねぇと、そのうちマジうちの親父に
ぶっ殺されるぞ」
「ふーんだ。どうせわいの事なんか眼中なかった
くせに偉そうな事言うなや」
と、祐太朗は拗ねたようにそっぽを向いた。
「ほら、コレ、約束の」
と、あつしは祐太朗の手に何かを握らせた。
開いた祐太朗の手のひらにはスーツの
前ボタン(第2ボタン)。
一瞬、祐太朗は物凄く嬉しそうに顔を
ほころばせたが、またすぐに元の仏頂面に戻る。
「こんなもんだけじゃ誤魔化されないんだから」
「だからぁ、送別会が終わったら今夜は
東京のラブホでしっぽりと。な?」
「…………」
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