卒業式

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 周囲にいる学生達が一様にざわつき始める。  その原因は、正門に前の路肩に停車した  クラウン・マジェスタの運転席から降り立った  スーツ姿の匡煌。                                                                               手にアネモネとラベンダーの花束を持っている。          それぞれの花言葉は ――  固い誓い・極限の愛・あなたを待っています。 『うわぁ ―― めっちゃイケメン!』   『誰の出迎えだろねー』 『あれっ、あの人の事どこかで見たような……』 『んな事どうだってかまへんわ。  あとで写メとっちゃおーっと』      匡煌が一歩 一歩、自分に近づいてくる度、  和巴の鼓動は打つスピードを速める。  和巴はそれに耐え切れなくなって、  踵を返そうとするが、  あつしと利沙がそれを制止した。 「!!……」 「逃げちゃダメ」 「男がさ、花束なんか持って来るって、  並大抵の覚悟じゃないと思うぜ」  匡煌が和巴の前にピタリと立ち止まったところで、  あつしと利沙と祐太朗は校舎の昇降口へ去る。  しかし、今や2人は生徒達の注目の的だ。 「……少し、時間あるか?」 「……う、うん」  2人はどちらからともなく、  路肩に停車中の匡煌の車へ向かう。
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