断ち切れない関係

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 和巴は、アパートの外廊下をこちらへ向かって  近付いて来る誰かの靴音でふっと目を覚ました。  どうやら、晴彦の帰りを待つ間にテーブルへ  突っ伏したままうたた寝をしていたようだ。  ―― 靴音は2人分。 『―― オラ、晴彦、着いたぞ』  その声に続いてドアが大きく叩かれ、  聞き慣れた男の声も ――、 『おーい、マイハニー、ご主人様のお帰りだぞぉー』 『馬鹿っ、声がデカイよ。近所迷惑考えろ』  和巴が慌てて玄関ドアを開けると、  したたかに酔った晴彦が従兄弟の日向英明に  支えられて立っていた。 「あ、ヒデさん、いつもどうもすみません」 「いやいや、どうせ帰り道一緒だし―― ほら、晴彦?  しっかりしろ、自分で歩けよー」  日向は”よっこらせ”と晴彦をソファーへ  座らせた。  酔い潰れた晴彦をいつも送り届けてくれるのは、  この日向くらいのものなのだ。  晴彦の酒癖の悪さは大抵の友人達に  知れ渡っており。  2年前、晴彦が麻薬取締法違反で逮捕されて  以来、それまでごく普通に仲の良かった友人達は  巻き添えを恐れて、掌を返したように1人、  また1人と晴彦の元から去って行った。 「お~しっ! これから飲み直すぞぉー。  和巴、酒とつまみの用意」 「バカ言ってんじゃねぇよ。お前分かってるよな?  今度の仕事、社長がどんだけ苦労して取ってきたか。  京都ガーデンホテルのロビーに10時集合だぞ。  もう寝ろ、俺も帰るから」 「なんだよ、なんだよ~、付き合いの悪い奴っちゃなぁ」 「あぁ、何とでも言え ―― んじゃ、和巴ちゃん、  お休み~」 「おやすみなさい」  和巴は日向を玄関口まで見送ってから、  戸締まりをして戻って来た。 「ねぇ、ちょっと早いけど朝ごはんにする?」  壁の時計が午前5時の時報を打つ。
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