頭の中まっ白……

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 (晴彦、おるかなぁ……)  利沙にはまた”えぇ加減にせいっ”って、  怒られるけど、例の東京行き、晴彦も誘ってみよ。     腕時計で時間を気にしながら、晴彦のアパート  までの道のりを急いで自転車を走らせる。     お見合いの話しを打ち明けて以来、  何となく気まずくなって会わずにいたので、  持ちが逸っていた。     ペダルを踏み込む足にも無意識に力が入る。     いつもはメールくらい入れてから行くのだが、  今日は突然行って驚かせてみたかった。        (喜んでくれるとええけど……)        自分の顔を見て驚き喜ぶ晴彦の表情を想像し、  和巴は思わず笑みを浮かべていた。     横ちょに入れば晴彦のアパートはすぐそこ ――。     部屋の明かりが点いているのを見てホッとする。        急いでアパート下の駐輪場へ自転車を停め。     そうして軽やかな足取りで3階の晴彦の部屋へ  向かった。     ドアに鍵はかけられていなかった。     その瞬間、何故か分からないが酷い違和感を  和巴は感じた。     嫌な胸騒ぎもする。     …… ゆっくり玄関のドアを開けた。  そうして玄関の上がり框に綺麗に並べられた  デッキシューズを目にし、和巴は少し眉をひそめた。        (誰か、友達でも来てるのかな……)     けど、さっきからずっと止まらへん、  この胸騒ぎは何なんやろ……。     ドックン ドックンと、  さっきまでの弾んだ鼓動とは全く別の、  嫌な動悸が凪を支配しつつあった。     音をたてないようにパンプスを脱ぐ。     そうっと居室の中にあがったその時、  か細い男の声が飛び込んできた。     それが寝室から聞こえているものだと気付いた  瞬間、ますます和巴の動悸は激しくなった。     震える手で寝室のドアノブへ手をかけた。       「あ……んふ……いぃ……」  その時にはもう、  男の喘ぐ声がはっきりと和巴の耳に届いていた。     意を決し、一気にドアを開け放つ!   
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