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彼女との会話にいちいち突っ込んでいたらキリがない。自由奔放な妹は、誰と会話していてもこうなのだ。
底抜けに明るくて『友達の友達』とも一瞬で友達になってしまう、そんな妹。
悩みなんて一つもなさそうで、羨ましい。
再びテレビに顔を向けた妹と共に、あたしもぼんやりテレビを眺め見た。知らない番組、知らない芸人。思えば、子供ができてからというもの、土曜の昼間にゆっくりテレビを見ることなんてなかった。まるでタイムスリップしたかのような感覚。ここだけゆっくりと時間が流れているようだ。
「あらぁ、笑、帰ってたの」
この空気にぴったりな間の抜けた声。台所の方からひょっこり顔を出したのは、母だ。
「うん。明日の昼、久々にみんなで集まろうってなって」
「ゆうくんとりっちゃんは?」
「合宿でいないよ」
あたしの言葉に、母はあからさまに肩を落とした。
あたしの顔を見るより、優斗と律子の顔を見る方が嬉しいようだ。母はすっかり『おばあちゃん』だった。
「まぁでも久しぶりに家族揃ったんだし、今日はピザでも取ってぱあっとしちゃいましょうか」
母はそう言うとおもむろにポケットからスマホを取り出した。最近、やっとデビューしたのだ。
「お父さんにも言っておくわね」と呟きながら、慣れない手つきでちまちまと操作をする。
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