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ここで言う『ぱあっと』とは、『料理が面倒だから全部出来合いのものにしましょう』という意味だ。人が増える日に母が繰り出す得意技だ。
「え、ピザ? やったねーん」
公ははしゃいで、年甲斐もなくばんざいをした。ツルリと綺麗な脇が丸見えになる。
「あんたたち、丁度いいわ。ちょっと二人でお弁当屋に行って、適当におかず買ってきてちょうだい」
「ええっ。なんで二人で……」
「あんたたちがそこでゴロゴロしていたら、ろくに掃除もできないのよ。いいからさっさと行ってきてちょうだい」
母がスマホを凝視したままそう言うので、あたしたちは顔を見合わせた。
「えー? おねえと? 楽しそう、行こうよォ」
独特の甘ったるい口調。こいつ、まだあたしに甘えが通じると思っているんだ。もう三十なのに。
「いいけどさぁ……寄り道はしないよ?」
「わかってまーす!」
公は早速立ち上がり、あたしの手を引いて歩いた。彼女の決断力と行動力は、半端ない。
レオパード柄のパンプスを履き、何が楽しいのかくるりとターンをした。そんな妹が、あたしには輝いて見える。
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