彼女と私

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でもちょっとまって。 本当にそうだった? そういえば昔、小学生も高学年になると女の子はもう、 好きな男性アイドルの話題で盛り上がるのに、私はまったく興味がなかった。 お気に入りのアイドルグループの切り抜きを、こっそり下敷きに隠し持ったり、 ブロマイドや缶バッチ集めに夢中になったりと、同級生は戦利品片手に見せあいっこ に夢中。けれども私は遠巻きにそれを眺めるだけだった。 そもそも男性アイドルの魅力がよくわからない。 確かに彼らは煌びやかで美しい。だけど型にはまったぬいぐるみのようで、 クラスメートが抱くような、手近な親しさや憧れといったものを、私は彼らに さっぱり感じなかった。 「この中で誰が好き?」 彼女たちの無邪気な問いに、無理をしてぎこちなく、 適当なメンバーを指すのが精一杯。 それよりも私は、TVから流れるCMを観る方が好きだった。 CMで採用されているのは大抵、若く瑞々しい女性達で彼女達のふわんとした 微笑み、遠く夢見るような眼差し、儚く華奢な手足、それらが踊るように動くのを、 いつまでも眺めていたかった。
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