10人が本棚に入れています
本棚に追加
でもちょっとまって。
本当にそうだった?
そういえば昔、小学生も高学年になると女の子はもう、
好きな男性アイドルの話題で盛り上がるのに、私はまったく興味がなかった。
お気に入りのアイドルグループの切り抜きを、こっそり下敷きに隠し持ったり、
ブロマイドや缶バッチ集めに夢中になったりと、同級生は戦利品片手に見せあいっこ
に夢中。けれども私は遠巻きにそれを眺めるだけだった。
そもそも男性アイドルの魅力がよくわからない。
確かに彼らは煌びやかで美しい。だけど型にはまったぬいぐるみのようで、
クラスメートが抱くような、手近な親しさや憧れといったものを、私は彼らに
さっぱり感じなかった。
「この中で誰が好き?」
彼女たちの無邪気な問いに、無理をしてぎこちなく、
適当なメンバーを指すのが精一杯。
それよりも私は、TVから流れるCMを観る方が好きだった。
CMで採用されているのは大抵、若く瑞々しい女性達で彼女達のふわんとした
微笑み、遠く夢見るような眼差し、儚く華奢な手足、それらが踊るように動くのを、
いつまでも眺めていたかった。
最初のコメントを投稿しよう!