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   ───近頃、華江(はなえ)は悩んでいた。  悩み、というより、困惑からくる動揺、といった方が正しいのかもしれない。  その起因が…この『ベルウエディング 可憐』お客様出入り口に、毎日のように通って来ていて──… 「(はな)さん」 「華江さん~」 「…」  ブライダルスタッフの間から上がる声に、華江はこめかみの辺りを指で揉み解しながら考え込む。 (そりゃ、あなたたちが言いたいことだって分かるわよ)  毎日毎日辛抱強く、会社の営業時間が終わるまで門の脇にしゃがみ込んている、ランドセルを背負った少女の姿というのは、とても人の憐憫を誘う姿ではないか。  ──…でも…  彼女がここへ来るようになって、今日で9日。  その9日間、華江は毎日心の中で『でも』を繰り返していた。  その原因は──… 『お父さんと、パパの結婚式を挙げさせてほしいの』  ブライダルサロンにある、石膏でできた天使がそのまま抜け出してきたような愛らしい顔立ちをした少女の口から飛び出したその『願い事』に原因があった。 .
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