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私たちはぬるくなってしまったスパークリングワインを新しいものと入れ替え、飲み直すことにした。
「テレビに映ってた女…あれが私だったかもしれない」そう、先輩が言う。
その顔は、憑き物が落ちたようにすっきりとしていた。
「あんたの言う通り。私の人生と引き換えにするほどの男じゃないわ」
そう言って先輩が笑う。
私も笑った。
それから私たちは、ホールのケーキを半分に割り、雑に食べながらスパークリングワインをがぶがぶと飲んだ。先輩は大笑いしながらヒロシの愚痴を吐き出し、私も大笑いしてそれを聞いた。
それから話は仕事の話、私の彼氏の愚痴へとどんどん展開していき、最後には二人ともなにを話してるのかわからなくなった。
翌日、私と先輩は二日酔いのひどい頭痛に耐えながら会社に行った。
その後、ヒロシ氏は一命をとりとめたらしいとニュースで見た。彼を刺した女も程なくして捕まったとのことだ。
それから1年。
「先輩!お誕生日おめでとうございます!」私は帰り際先輩に呼びかけた。
「ありがと、杉山」振り向いた先輩は今日も上下黒い服、黒髪のロングヘアだが、その首にはもう、金色のネックレスはない。
先輩はそのまま颯爽と帰っていった。夜の予定は私も先輩も聞かなかった。
ただひとつわかるのは、次にヒロシを倒しに行く一団には、先輩はいないだろうということだ。
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