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「唯?」
日曜日の昼下がり、少し遅めの昼食を二人で取った。
僕が本社勤務、唯は店舗勤務なのは変わらずで、基本土日が休みの僕とシフト制の唯はあまり休みがかぶることがなかった。
久しぶりの同じ休日にどこかへ出かける案も出ていたけれど、天気予報が思わしくなかったことと朝起きたときのどんよりとした空模様で、今日は家でゆっくり過ごそうと決めた。
運命だと思わずにはいられない偶然の再会を果たしてから、さらに二年が経とうとしていた。
一緒に仕事をした最後の日に、店長の計らいで、仕事終わりにみんなでご飯を食べに行った。
そのおかげで一緒にいられる時間が延びたどころか、仕事以外の話をたくさんすることが出来た。
仕事中に少しだけ交わす雑談だけで胸が躍るようだったから、もっと話が出来たら、きっとこの上なく楽しいんだろうなと思っていた。
期待通りの楽しい時間はあっという間に過ぎて、でもそこから、これでいいのだろうかと不安になるくらいスムーズにことが進んだ。
まるでそれが必然であるかのように、連絡先を交換するのも、デートをするのも、付き合い始めるのも。
これが運命なんだろうかと、どこか信じ切れなかった僕の心の内を、確信に変えるには十分だった。
きっと初めて会ったあの夜から、こうなるべくして僕たちは出会ったんだ。
第一印象とは打って変わって、唯の笑顔に僕がどれだけ救われて、支えられてきたことか。
これからもこの笑顔を一番近くで見ていたい。
この笑顔を守っていきたい。
そう強く思えるほど、唯は僕のすべてだった。
順調という言葉を絵に描いたような日々。
キラキラと、自分の世界が輝いているのがわかる。
しかし一方で、幸せに満ちた僕の瞳は、いつの間にか自分自身に都合の良いものしか映さなくなっていたのかもしれない。
気付かないうちに、視界のあちこちで薄い靄がかかっているような。
そうやって見える世界が、これからもずっと続く幸せな世界だと、僕は思い込んでいた。
違和感とよぶにはあまりに小さすぎて、とっくに見落としてしまっていたんだ。
何かきっかけ一つで簡単に崩れてしまいそうな綻びとなって、常に二人の間に存在していたというのに。
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